サーミスタとは?温度センサの違いや特長をわかりやすく解説
2023/03/24
ODM基板開発
対象物の温度を測定するものはもちろん、温度に基づいて制御をする製品にとって、温度センサは不可欠な部品です。数ある温度センサの中でも、サーミスタは温度計や体温計などに使われている身近なセンサの1つです。今回は、このサーミスタについて、わかりやすく解説します。
温度センサの種類と原理
私たちの身の回りには、多くの温度センサが利用されています。 代表的な温度センサとしては、サーミスタのほかに、熱電対、金属測温抵抗体、IC化温度センサ(IC温度センサなど)があります。主な温度センサの種類は、次のとおりです。(接触式温度センサ)
●サーミスタ
温度によって電気抵抗値(電流の流れにくさ)が変化する半導体を用いて温度を計測するセンサ(本 記事で解説するセンサ)
●熱電対
2種類の金属の両端を接続しループ状にし、2接点間の温度差により起電力が発生する現象(ゼーベ ック効果)を利用して温度を計測するセンサ
●金属測温抵抗体
電気抵抗値が温度によって変化する金属の性質を利用して温度を計測するセンサ
●IC化温度センサ
温度を計測するために必要な回路を1つの半導体IC(集積回路)に組み込み温度を計測するセンサ
【サーミスタの特長】
サーミスタは、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄などの金属酸化物を主成分とした半導体セラミック(電気を通すセラミック素材)からできています。一般に、半導体の電気伝導率は、温度の上昇に伴って増加します。サーミスタは、この特性を利用して温度を検出します。
◆温度変化に対して抵抗変化の値が大きいため、感度が高い
◆構造が簡単で低価格である
◆小型かつ堅固である
◆寿命が長い
【サーミスタの動作原理】
半導体セラミックは、温度によって内部の電子と正孔の数が変化する
↓
その結果、電気抵抗値が変わる
↓
この変化を利用することにより、サーミスタを使って温度を測定できる
【サーミスタの温度特性】
サーミスタの温度特性については、サーミスタの抵抗値と温度との関係を表す次式により説明されます。
R=R0 expB(1/T-1/T0)
<式中の記号の説明>
R:温度T(K)におけるサーミスタの抵抗値
R0:基準温度T0(K)におけるサーミスタの抵抗値
B:B定数。サーミスタの抵抗変化の大きさを表す定数
サーミスタの抵抗値は、B定数によって決定される温度の指数関数として変化します。B定数は、サーミスタ定数とも呼ばれ、材料により異なります。B定数が大きいほど、温度変化に対するサーミスタの感度は高くなるのです。※B定数は、任意の2点間の温度から計算します。
サーミスタの特性比較
サーミスタには、さまざまな種類があります。大きくは、NTC、PTC、CTRの3種類に分類されます。
それぞれについて、特性の比較を以下に示します。
【サーミスタの特性比較】
種類 | 温度特性 | 使用温度範囲 |
---|---|---|
NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタ | ・温度上昇とともに抵抗値が減少する ・負の温度係数を持つ |
-50℃~500℃程度 |
PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタ | ・温度上昇とともに抵抗値が増大する ・正の温度係数を持つ |
-50℃~150℃程度 |
CTR(Critical Temperature Resistor)サーミスタ | ・ある温度を超えると抵抗値が急激に減少する ・負の温度係数を持つ ・正の温度係数を持つ |
-50℃~150℃程度 |
サーミスタセンサの様々な用途と使い方
近年は、省エネルギーや環境対応といった時代の要請を受けて、自動車や家電、空調機器、住宅設備機器、情報機器など、さまざまな産業分野で採用が増えています。
サーミスタの用途は、次のようなものがあります。
【サーミスタの用途】
◆住宅設備機器
ソーラーシステム、洗浄便座、給湯機器、エコ給湯システムなど
◆空調機器
ファンヒーター、ルームエアコン、業務用エアコンなど
◆家電
電子レンジ、炊飯器、冷蔵庫、IH調理器など
◆情報機器
プリンター、複写機、複合機など
◆産業機器
防災機器、機械・ロボット、冷凍ショーケース、冷凍コンテナなど
◆自動車
カーエアコン、吸排気温・水温・燃温・油温用温度センサ、ハイブリッドシステム用温度センサなど
◆医療・ヘルスケア
電子体温計、医療機器用温度センサなど
ニッポーでは、温度センサ、温度調節計、湿度調節計といった計測分野において、数多くの開発実績があります。温度や湿度の測定・制御に関して、お客さまのご要望に合わせたご提案が可能です。詳細を知りたい方は、当社までお気軽にご相談ください。