PID制御とは?メカニズムと役割をわかりやすく解説
2022/06/08
ODM基板開発
数多くある制御方法の中で、広く使われるPID制御。昔から使われる古典的な制御法であり、自動車の速度制御やエアコンの温度制御といった身近なものにもPID制御が使われています。
では、PID制御のメカニズムやその役割とは何なのか、今回の記事でわかりやすく解説していきます。
従来のオンオフ動作における問題
最も単純な調節動作に、オンオフ動作があります。身近なところでは、バイメタル式の電気こたつに採用されています。電気こたつのオンオフ動作では、目標温度まで100%の出力で上昇したあとに設定温度を超えると0%になって、温度が下がることで温度調整を行います。しかし、目標温度から戻りすぎや行き過ぎ(オーバーシュート)が発生しやすく、波を打つような制御結果になってしまい、理想的な温度調整にはいたりません。
構造が簡単なため安価に構成できる点はメリットですが、上記のような問題もあるのです。
PIDは3要素を組み合わせて制御を行う
PID制御とは、温度制御などに用いられる制御方式のことです。目標とする値を設定したあとセンサーで現在の値を読み取って、目標値に近づけようと自動で調整します。
PIDとは、以下の動作の頭文字を取っています。
P動作:Proportional(比例)
I動作:Integral(積分)
D動作:Derivative(微分)
PID制御は、以下の制御式(計算式)またはブロック線図によって表されます。
PID制御によってオンオフ動作の問題を解決できる
PID制御によってオンオフ動作の欠点を解決することができます。
P動作とは、現在値と設定値の偏差に比例した操作量を比例帯内で働かす動作のことです。オンオフ動作のオーバーシュート(行き過ぎ)やアンダーシュート(戻りすぎ)といった問題を解消することができます。
I動作は、P動作と組み合わせてPI動作として用いられます。P動作で生じたオフセット(温度偏差)を累積させて、その累積値に比例させた量を操作量に加えることで、誤差を補正することが可能です。
D動作は、外乱の影響などによる急激な変化に反応して出力を修正します。今回の誤差が前回の誤差よりも大きい場合に操作量を変化させることで、急な変動にも対応することができるのです。
以上の特性があるので、オンオフ動作よりも優れた制御動作が可能になります。
PID制御をシミュレーション
先ほどの電気こたつに例えて、PID制御をシミュレーションしてみましょう。
Pを大きくすると、最高出力になる機会は少なくなることから、目標温度に達するには時間がかかります。ただし、行き過ぎにはならないので、目標温度に到達すれば安定して温度を維持できます。
Iを大きくすると、より多くの測定データを元に出力が決められるので精度は高くなります。一方で、温度が安定するまでの応答時間には問題が残るため、D動作が必要です。
D動作では、「1秒で0.5度下がったが、あと3秒は同じペースで下がるだろう」といったように、数秒先の未来を予測して出力を判断します。Dを大きくすると、長時間のブレを予測したうえで出力を決めることが可能です。
今回の記事では、PID制御のメカニズムやその役割についてお話しました。PID制御に含まれるパラメーターの調整は、数値でのシミュレーションを行ったり対象物を使って試行錯誤したりすることで、最適化することができます。