ハウス内環境の測定に誤差が生じる原因と正確に測定する方法

2024/09/10

農業用コントローラ

栽培シーズンが始まるにあたり、今まで使っていた計測機器(センサー)を清掃して校正をかけるなどメンテナンスを行う時期になりました。しかし、今お使いの計測機器やセンサーは果たして正確に測定できていますか?経年劣化が進み、測定値がズレてる…なんてことも珍しくありません。
この記事では、測定環境に誤差が生じる原因や誤差を修正する方法についてご紹介します。

換気温度に誤差が生じる原因と補正方法


ハウス内に温度センサーを設置する際、正しく測定するためには直射日光があたらないこと、センサー容器(ボックス)内の空気が循環できていることが大前提です。しかし、金属製、樹脂製のセンサー容器の場合、容器自体が直射日光の影響を受けて熱を持つ「輻射熱」の影響で、2~4℃高い誤差が出ていることがあります。

熱には空気を温める「温風タイプ」の熱と、風に影響されない「赤外線タイプ」の輻射熱があります。センサー容器内の空気を常時循環させていても、直射日光で容器が持つ熱は気流に関係なくセンサーを温めるため、誤差が出てしまいます。これによって、「換気の設定温度を下回っているにもかかわらず換気が始まり、実際の日中温度が低くなってしまう」という例が多くみられます。
しかし、この場合厄介なのは、誤測定に気づかないことです。

前述のとおり、事例の多くは温度センサーに直射日光が当たっていること、輻射熱によってセンサー容器の温度が上がりセンサーが誤作動していることが理由です。

●対策

むき出しの温度センサーの場合は、日射が直接センサーに当たらないように、センサーに傘をかけて遮光してください。[図1]傘が深すぎると熱がこもるため、気流に注意が必要です。 さらに傘表面に白またはアルミ箔などで遮熱加工を行うと、温度計測の誤差が少なくなります。

▲[図1]


ニッポーの温度センサー、湿度センサーは百葉箱のような厚手の木箱を採用しています。
直射日光が当たってもその影響を受けにくい構造とすることで、計測する温度を常に正確に表示することが出来ています。

さらにセンサーは乾湿式温湿度計を採用し、検定器並みの精度を持たせています。一方で、湿式センサーの水を補給すること、時々ガーゼを交換する手間があります。一般的に利用されている電子式(高分子)湿度センサーは1年程度で寿命が来るため毎年高額な交換費用が掛かります。比較すると乾湿式センサーは低コストで高い精度が維持できるため、メリットのほうが大きいと思われます。

▲[図2]


モニタリングするだけの場合はもちろん、その先に環境を制御するのであればより一層計測の正確さが重要となります。[図2]

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炭酸ガス濃度を正しく測定する方法


“炭酸ガスは赤外線を吸収しやすい”という性質を利用したNDIR方式(非分散型赤外線吸収法)のセンサーは、空気に赤外線を放射し、その吸収(減少)率で炭酸ガス濃度を計算しています。 しかし残念ながら、この仕組みは時間が経過するにつれて表示濃度が高くズレていく傾向があります(経時変化)。[図3]の例では1,000ppmの気体を測定し続けるテストにおいて、70日で3割も誤差が出ることが確認されています。2ヶ月も放置すれば誤差が拡大し、炭酸ガス飢餓(不足)状態であるのにも拘らず炭酸ガス発生器は置物のようにじっとして作動しませんでした。

▲[図3]


これを解消するためには、各機器の説明書に記載がある方法でおおよそ2週間に1度の校正を徹底してください。
年数が嵩んでくると赤外線を発する光源の「経時劣化」も発生するため、より精度を高めたい場合は経時「変化」と経時「劣化」をともに監視、対策する機器を選定してください。

★センサーの劣化や故障を防ぐポイント★
1)センサーが硫黄燻煙剤を吸引すると、急激に腐食が進んで計測が不安定になります。農薬散布など消毒を行う際は停止しましょう。
2)夜間の炭酸ガス計測の重要性は低いため、夜間計測を止めることでセンサーの寿命を延ばすことができます。

しかしながら、栽培シーズン中の管理作業繁忙期に「そんな細かいセンサーの世話なんかできるか!」と思う方もいらっしゃるでしょう。

最終的な解決策として、これらを自動で校正、監視、対策する仕組みが備わった測定器(センサー)を使うことをお勧めします。ニッポーでは毎日自動校正をかける機能を備えた機器をご用意しています。

▲CO₂濃度コントローラ「CO₂2ナビ・アドバンス」構成例

制御機器付属センサーでモニタリングを始めることでコストダウン

モニタリングから環境制御を始めることは正しい流れです。モニタリングを始めると、自分のハウスの環境データを数値やグラフにして見える化できるため、自分の管理、環境が適切なのかが判断できます。しかし、モニタリングを続けていくと温度管理、湿度管理、目標飽差、CO2濃度など環境を適正にコントロールする必要性に気づき、制御機器の導入を検討することになります。

実は、あとから導入するその制御機器にも個別にセンサーが付いています。つまりセンサーが重複してしまうのです。

十中八九、モニタリングの先は「環境制御」に着手するため、「制御機器のセンサーでモニタリングを行う」ことが得策です。


ニッポーのセンサーは正確さを大切にしており、制御も正しく実践することに力を入れています。
下記(図5)はモニタリングができる環境制御機器です。
まず初めに着手する日射比例潅水制御器(潅水ナビ)をはじめとして、フル制御の統合環境制御器(ハウスナビ・アドバンス)まで、現場に合わせて必要な機器を選べるようにしています。


まずは、高精度の計測機器によるモニタリング→その機械で必要な部分だけ自動制御という合理的な手順もいいようです。
ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。
導入手順から測定方法、栽培管理のアドバイスなどサポートさせていただきます。

【お知らせ】

ニッポーの「木製温湿度センサボックス」について 水入れタンクへの補給は精製水を推奨しておりましたが、水補給2回毎にガーゼを交換いただくことで、水道水で代用いただけます。ガーゼは薬局または100円ショップなどで購入されたものをカットしてお使いいただけます。 パソコン用の画像

【執筆】
アグリアドバイザー 深田正博

熊本県野菜専門技術員・普及指導員の経験があり、現在は株式会社ニッポーのアグリアドバイザーとして現場目線の栽培指導やセミナーの講演を行う。

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