シーズンオフにおすすめの土壌管理とは?排水性を上げる方法

2024/05/24

農業用コントローラ

過不足のない潅水を行うためには、“土壌の排水性と保水性が両立されている”ことが重要です。この記事ではシーズンオフにしかできない土壌管理の方法について解説します。

排水性を上げる土壌管理の方法

水田、畑地ともに十分な潅水を行うためには、“しっかり排水できること”が前提になります。とくにポンプに近い場所は潅水量が多くなり、遠い場所は不足することが一般的です。土壌水分が不足すると、植物は蒸散ができなくなります。蒸散ができない植物は、身を守るために気孔を閉じ、光合成が停止。体温上昇と脱水により萎れてしまいます。しかし、水分不足の場所に潅水量を合わせてしまうと、今度は(耕盤・鋤床がある場合)余剰水分が溜まっていき、根が酸欠状態となって根腐れの原因となります。[図1]

▲[図1] 酸欠土壌(グライ層)


根は酸素要求量が多く、不足すると吸水・吸肥能力が落ちてゆきます。地上部の環境制御に加えて地下部の土壌管理を見直してみることも重要です。

▲[図2] 土壌空気の酸素濃度と果菜の生育<引用元:位田藤久太郎「蔬菜の根の生理に関する研究」(1956)>

【対策】

シーズンオフにはプラソイラなどにより耕盤破砕を徹底しましょう。また暗渠がある場合は、暗渠上端に破砕面を交差させて排水をつなぎましょう。

圃場ごとに異なる潅水条件

どのような圃場でも、広いハウス内では土壌の状態がバラつくことが一般的です。乾燥しやすい・排水が悪い、水量が多い・少ないなど、異なる様々な条件が同じ圃場内に散在しています。この条件下で、例えば土壌水分・ECセンサーを1ヵ所に設置し、その数値をもとに潅水・施肥を判断してしまうと適正潅水量・施肥量から大きく外れてしまうことになります。

ロックウールやココピートなど工業的に作られた培地栽培では条件(性状)が均一で、水分や肥料の過剰分は確実に排水・流去されてゆきます。土耕栽培とは大きく異なる部分です。

▲[図3] 圃場の水分状態

土耕栽培の排水対策

▲[図4] 団粒は根の環境に好影響<引用元:九州大学>

正しい土づくり(有機物+基肥の施用)を行うことで、微生物の活性維持、土壌の団粒構造の維持、保水性・排水性の両立、根圏の酸素供給維持、細根伸長の促進、根の呼吸維持、吸肥・吸水の維持が可能となります。
土の基本構造である団粒が崩壊すると、土壌乾燥後は水が浸透しにくく、反面湿りすぎると極度の酸欠状態になるなど、根の呼吸や活動を維持することが難しくなります。さらに、徐々に土壌中の微生物相が偏り、青枯病、萎凋病、立枯病などの致命的な土壌病害に侵されることになります。

最近では、土耕栽培の産地で“根圏への酸素供給剤を頻繁に施用したら効果があった”という例が散見されます。CN比の整った有機物投入が労力的な理由で割愛されているのが現実です。また、“土壌への酸素供給剤投与で効果が現れている”例が見られます。これは土壌の団粒がすでに崩壊し慢性的に酸素不足に陥っていると考えられます。この場合の酸素供給剤の施用はある意味対処療法(尻ぬぐい)であり前向きな対策ではありません。

耕盤破砕

▲[図5] サプラソイラ施工深層部分の発根状況(ピーマン)

ピーマンは一般的に浅根の作物と云われていますが、[図6]のようにプラソイラ(※1)を施工し耕盤破砕を行った部分においては排水性が高く、水分、酸素が深層まで届く状態となり局所的に60センチ以上の深さまで細根が密生している状況が確認されました。従来浅根であったケースでは排水不良で滞水していたり深層に気相(酸素)が少ないことなどが原因で、酸素要求量が多い細根が上層に逃げていたということではないでしょうか。
※1:プラソイラは破砕幅が広いので排水能が長期間維持されますが下層土を持ち上げるので、下層土が不良の場合はサブソイラ等に変更します。

▲[図6] ハウス内の畝方向だけでなく横方向の耕盤破砕が重要

深層まで細根が確保されていると地表面の高温、低温、乾燥などのストレスを避けることができ、広い範囲の根圏から水分、養分を吸収できること、根傷みも少なく根を再生する必要も少なくなるため無駄な消耗も少ないなど様々なメリットが挙げられます。曇天続き後の晴天時の萎れも少ないなど地上部ストレスにも耐性が高いことが確認されています。

▲[図7] 畝方向破砕の排水を横方向破砕で暗渠の上端に繋げる

畝方向破砕は耕盤位置の下、横方向の破砕は暗渠の上端の深さとしますが、耕盤の深さ、厚さ、破砕の爪を入れる深さは「イボ竹」や「貫入硬度計」があれば容易に確認できます。暗渠の位置は圃場端の立ち上げパイプの位置で確認します。暗渠の深さは勾配をつけてあるため手前と奥の深さは異なることに注意が必要です。
爪を入れる位置は畝下部分に集中してください。優良事例では一つの畝に3本のサブソイラ施工の例があります。ハウスの両妻サイドに畝位置の目印をつけて慎重に作業しましょう。

【執筆】
アグリアドバイザー 深田正博

熊本県野菜専門技術員・普及指導員の経験があり、現在は株式会社ニッポーのアグリアドバイザーとして現場目線の栽培指導やセミナーの講演を行う。





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