4段サーモを使った上手な省エネ暖房とは
2023/02/20
農業用コントローラ
ハウス内の温度をより細かく制御することで作物の生育を促し、さらに省エネも実現できるのが「4段サーモ(多段サーモ)」を使った暖房システムです。4段サーモは冷房の設定をすることも可能ですが、この記事では「暖房機を上手に使った冬場の温度管理」について解説します。変温管理の重要性と4段サーモを活用するためのポイントを見ていきましょう。
変温管理の重要性
植物は光合成によって水と二酸化炭素(CO₂)を分解して糖を作り出し、芽や花、根、果実の作物となる部分を成長させると同時に、呼吸のために糖をエネルギーとして消費します。
作り出された糖が葉から他の部分に移動することを「転流(てんりゅう)」といい、転流は光合成によって糖が蓄積される日中から夕方にかけて活発になります。
植物の呼吸量は温度に影響されます。光合成が行われない夜間に温度が高いと、呼吸をするためにエネルギー(糖)を使ってしまうため、転流が抑制されます。そのため、光合成が行われる日中は温度を上げ、夜間は温度を下げることで植物の呼吸量が抑えられ、作物の生育にプラスの効果が生まれます。
●温度管理の例
4段サーモによる省エネ効果
4段サーモとは、24時間を4ステップに分割し、希望する温度を保つよう暖房機を制御でき、植物生理に合わせた温度管理を行います。また、夜間の設定温度を低く設定することができるため、暖房のムダ炊きを防止し省エネ効果が期待できます。温度を一定条件に保つ恒温管理と比較した場合、5%程度の省エネ効果が見込めます。
上手な省エネ暖房の方法
作物の生育に適した温度をより細かくコントロールするのが4段サーモによる変温管理です。そのためには、作物の種類に応じた「最適な設定温度を知る」こと、設定した温度を実現するために「ハウスの保温性を高める」ことが重要になります。
最適な設定温度を知る
野菜・花き・果樹それぞれの作物ごとに、生育適温や限界温度、冬期の標準管理温度、成長ステージによる温度管理目標があります。たとえばイチゴの促成栽培では、夜間の温度管理が生育や収量・品質に影響を与えるため、最低夜間温度を5~8℃に維持することが推奨されています。(※参照:イチゴ促成栽培の安定化技術 厳寒期保温方法の検討)
このように、作物によって温度管理のポイントが異なるため、4段サーモを効果的に使うためには、作物に最適な設定温度を知ることが最初のステップです。(※温度管理目標は、普及センターやJA等で確認することができます)
ハウスの保温性を高める
温度管理のための機器を備えても、ハウスそのものの保温性が十分でなければ、作物に適した温度管理ができません。そのため被覆資材選びや、複層カーテンによる多重化でハウスそのものの断熱性を上げることが省エネにつながります。
また、ハウスの気密性を確保し、送風ダクトや循環扇を上手に使って温度ムラを抑えることも重要です。
ニッポーのデジタル式4段変温サーモ『マイキング 2200』は、0.1℃刻みの感度設定と3位置制御が可能で、幅広い温度管理ニーズにお応えします。