作物の高温障害に注意!ミストを使った対策をご紹介
2022/08/22
コラム
近年、夏の暑さが厳しくなり、猛暑日も増えてきました。作物を栽培するうえで、夏の暑さは高温障害を引き起こす原因にもなり、注意が必要になります。
露地栽培と比べて温度が上がりやすいハウス栽培では、冷房をはじめとする高温障害対策が必須です。今回は野菜の高温障害の症状と、対策のひとつであるミストを使った細霧冷房についてご紹介します。
野菜の高温障害の症状
生育適温を超える高い温度にさらされた作物は、根の活性が低下したり光合成が妨げられるため、下記のような生理障害が発生しやすくなります。
<高温障害による主な症状>
■果菜類(トマト・ナス・メロンなど)
着果不良、果実の生育不良(奇形果・裂果・変色)、糖度の低下など
■葉茎菜類(ブロッコリー・コマツナなど)
結球不良、奇形、茎内部の空洞化、芯腐れなど
このほか、育苗から収穫までの生育期間を通して、生育の停滞や不揃い、しおれ、葉焼けなどの症状が多く見られます。
ミストによる細霧冷房のしくみ
農業の現場で用いられているミストとは、ノズルから水を噴霧し、細かい霧を発生させる設備のことです。主にハウス内の加湿や冷却に用いられるほか、飽差(※)を調整することで作物の光合成を促進したり、CO₂の利用効率を高めたりする目的でも利用されます。
※飽差:1m³の空気中にあと何gの水蒸気を含むことができるかを示す値。気孔の開き具合、光合成量、蒸散量などに影響を与える。
ミストを活用した冷却方式は、一般に「細霧冷房」と呼ばれています。噴霧された霧が蒸発する際、周囲の熱を吸収する原理(=気化冷却)を利用してハウス内の温度を下げる仕組みです。自然現象を上手に活用した方法なので、ヒートポンプのような空調機を使用する場合に比べてランニングコストを大幅に抑えることができます。
噴霧される水滴の大きさは、一般的なノズルで30~100μmほどが目安です。水滴のサイズが小さいほどスムーズに蒸発するので、周囲の気温が下がりやすくなるという特徴があります。
冷房効果アップ!3つのポイント
1. ミストノズルは高い位置に設置しよう
ミストノズルの設置位置が低く、作物との距離が近いと、噴霧された霧が気化する前に作物に到達してしまうので、十分な冷却効果を得ることができません。作物が濡れることで病害が発生したり、品質低下を招いたりするリスクも高くなってしまいます。
2. 細霧冷房と換気はセットで考えよう
ミストを連続使用していると次第にハウス内の湿度が高くなるので、噴霧された水が気化しにくくなり、冷却効果が薄れてしまいます。天窓や側窓を開ける、換気扇・循環扇を稼働させるなどして、ハウス内の湿度が上がりすぎないように換気量を調整してください。
3. 遮光資材で太陽熱をカットしよう
遮光ネット・カーテンなどの被覆資材でハウス内に差し込む日射量を抑えることで、太陽熱による温度の上昇を防ぎ、細霧冷房の効果を高めることができます。しかし、必要以上の遮光は作物の生育を妨げることがあるので注意しましょう。
以上、作物の収量や品質を大きく低下させる高温障害の症状と、気化冷却を活用した細霧冷房について解説しました。高温障害を防ぐために、「飽差mini(ほうさミニ)」「飽差+(ほうさプラス)」などのコントローラと細霧冷房を併せて活用しハウス内の温度を下げ、元気な作物を栽培しましょう。