農業の自動化はどこまで出来る?企業×農家の取組み

2021/08/25

農業用コントローラ

科学技術の発展により、私たちの生活は大変便利になりました。これは農業の世界も同様で、AIやロボット技術を活用した「農業の自動化」が注目を集めています。この様な次世代型の農業は「スマート農業」とも呼ばれ、農作業の省力化や効率の良い高品質の作物生産が期待されています。今回は、企業や農家の方が取り組んでいる農業の自動化についてご紹介していきます。

農業自動化のメリット


近年、ITやICT、IoTといった最新技術を活用し急速に発展するスマート農業ですが、これらを導入することでどの様なメリットがあるのでしょうか。今回は施設園芸分野を中心にご紹介していきます。


1.省力化による負担の軽減

就農人口の減少により後継者不足、人材不足といわれ、自動化によって農作業の負担を軽減し、少ない人手でも農作業が可能になることが期待されています。たとえば、測定したデータをスマートフォンやタブレットを使ってリアルタイムで見られることで、ハウスを巡回する回数を減らすことができます。環境制御装置などを利用し、天窓やカーテン、暖房機を連動させ作物の生育環境を自動でコントロールさせることで、作業の負担を軽減することができます。



2.品質・収量の向上

センシング技術を使い栽培環境を測定、管理することで作物の品質、収量のアップが期待されています。たとえば、炭酸ガス発生装置と濃度コントローラを組み合わせ、炭酸ガスを施用することで作物に必要な時に必要な量を与えることができます。無駄なコストの削減し作物の品質と収量の向上を図ることができます。



3.システム化で農業を始めやすく

これまで技術の伝承は、人から人へ伝えられてきましがが、ICT技術を使えば温度、湿度、CO₂、日射量、土壌など様々な環境データを測定し、数値化されたデータを基に栽培が可能になります。データ化やシステム化することによって、経験の無い新規就農者でも栽培技術を習得し易くなります。



自動化の導入事例


様々なメリットがあり農業の発展が期待されている農業の自動化ですが、導入されている事例にはどのようなものがあるのでしょうか。ここからは具体的に農業自動化の取り組み事例を紹介していきます。


◆ICT技術×トマト農家

千葉県のJA長生施設野菜部会では、生産するトマトの生産量が約70%まで減少し、出荷量の確保が課題になっていました。 そこで、養液栽培システムと統合環境制御装置や環境測定器などのICT技術を導入。樹勢や継時変化を把握し、測定結果を生産者間で共有することで越冬長期作型で反収(10aあたり)が25トンから34トンに増加(36%アップ)しました。



◆環境モニタリング×花き農家

長野県の花き生産者は、高品質の花きを栽培するため土壌測定が必要でしたが、測定に手間や時間がかかることが課題になっていました。 そこで、土壌センサや気温センサ等を導入。リアルタイムで測定し、Wi-Fi経由でクラウド上にデータを保存しました。潅水や施肥のタイミングをデータで判断できるようになり、ハウスを巡回する回数が減り、時間の余裕ができました。



◆データの見える化×新規就農者

徳島県できゅうりを栽培している海部次世代園芸産地創生推進協議会では、新規就農者の育成、早期の技術習得が課題になっていました。 そこで、IoTを活用。統合環境制御装置と養液システムを設置した実験ハウスでキュウリを栽培し、地域の平均を超える収量を達成。この栽培技術を継承するため、別棟ハウスにモニタリングを設置し、新規就農者がお手本となるデータを基に栽培を実施。栽培技術を数値化することで、早期の育成、技術継承が可能になりました。


農業自動化はどこまで進む?


農業の自動化によって、日本の農家さんが抱える様々な問題を解決することが期待されています。政府は「2040年までに農林水産業の完全自動化を実現する」という長期的な目標を掲げていることからも、今後も農業の自動化は目覚ましい発展をとげていくものと考えられます。

多くの革新的な技術は、現場の農家の助けになるだけでなく、日本の農業を作り上げていく新しい農業の形となるはずです。

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