新規事業にきのこ栽培を選んだ国分グリーンファーム様を取材

2024/09/24

きのこ栽培システム

近年注目を集めているきのこ栽培。新規事業として始める企業も増えています。 今回は新規事業としてきのこのハウス栽培に取り組まれている埼玉県熊谷市の国分グリーンファーム様に、栽培を始めたきっかけや現在の栽培状況、今後の展望をインタビューしました。

新規事業に「きのこ栽培」を始めたきかっけ

国分グリーンファームのグループ企業である国分商会は、45年以上にわたりタイヤのリサイクル事業を展開しています。その中で「よりクリーンな企業イメージにしていきたい」との思いから、緑(自然)にかかわる事業を始めるため2009年に国分グリーンファームを設立しました。
以来、サッカー場などで使用されるティフトン芝や高麗芝を生産し、2018年からはブロッコリーやキャベツ、ネギ、トウモロコシなどの露地野菜も栽培しています。そして今回、新規事業としてビニールハウスでの菌床シイタケ栽培に取り組むこととなりました。

きのこ栽培用ハウスの建築


2023年11月からハウスの建築が始まり、2024年2月に完成。3月から栽培をスタートしました。ハウスの栽培面積は151㎡で、内栽培スペースは118.8㎡、20㎝×15㎝×20㎝の菌床が約2,200個入ります。冬は北風が強く、過去に大雪でハウスが倒壊した地域なので、強風と雪対策のためにパイプの径を太く(42φに)しました。


費用対効果を考えながら機器を選定し、電気式のエアコン、湿度調節器、超音波加湿器、熱交換器、CO2コントローラなどの設備を揃えました。とくに導入してよかったと感じたのは熱交換器です。熊谷は暑い地域なので夏場のエアコンの稼働率が高くなります。電気代は月12万円ほどを想定していましたが、実際にはその半額程度で済み、省エネと経費節減に繋がりました。


また、シイタケ栽培ではCO2は排出される一方のため、CO2コントローラと熱交換器を連動させて、基本的に栽培室内のCO2濃度が800ppm以下になるように設定しています。


栽培棚は自分たちで組み立てました。他にも自作した設備が多くあります。 浸水槽はちょうどよいサイズの市販品が無かったため、工場で薬品などを入れる容器を半分に切って自作しました。菌床が120個ほど入ります。想定外だったのは、浸水時に菌床が水泳のビート板のように浮いてきてしまうことです。浸水槽に入れれば水を吸って沈むものだと思っていたため、どうやって浸水させたら良いか試行錯誤しました。最終的には鉄格子の蓋を自作し、安定させました。

シイタケのハウス栽培で苦労した「夏場の温度管理」


群馬県の菌床屋さんから菌床を購入しており、栽培環境の温度や湿度などを教えていただきましたが、それはあくまでも“目安”の話。同じ菌床でも栽培環境によって管理方法が変わるとのことでした。ビニールハウスメーカーや設備メーカーと相談しながら作り上げたオリジナル仕様のハウスで、ましてや熊谷という暑い地域。手探りで適正な環境を見つけていくしかありませんでした。

実際に栽培を始めてみると、発生サイクルや成長速度が温度の違いや水やりの具合などで予想以上に異なったため大変苦労しました。菌床屋さんに“ハウスと菌床の相性がある”と言われた意味がようやくわかりました。

一番大変な栽培管理は「夏場の温度」です。ハウス内の温度は20℃~22℃に保つようにしていますが、今年の夏は40℃近い猛暑日が続き、エアコンを限界の15℃まで下げても22℃以上に室内温度が上がりました。急激に温度が変化しないよう、ゆっくり温度を上げて肉厚のシイタケを栽培できるよう試行錯誤しています。現在5馬力のエアコンを導入していますが、この異常な暑さに追い付かないため次はワンランク上のエアコン(8馬力)導入を検討しています。


また、今回建てたハウスは“コストが抑えられるなら”と思い土間打ち(コンクリート舗装)をしなかったのですが、実際に栽培してみると湿度が上がり過ぎてしまい除湿に苦労しました。特に梅雨時は湿度が100%になってしまいカビが発生する危険もあったので、湿度がこもる朝方にすべての窓を1時間ほど開けて換気をしましたが、除湿するより加湿器や散水装置を使って加湿していく方が管理しやすいため、土間打ちはした方が良いですね。


今後シイタケ栽培を拡大していきたいと考えているので、こうした設備情報や栽培ノウハウは2棟目以降のハウス建設に活かしていく予定です。

暑い熊谷に『ぶあついしいたけ』が誕生


露地野菜ではJAをメインの出荷先にしている作物もありますが、シイタケは自社で販路を開拓していきたいと考えています。まずは自分たちで管理と販売ができる少量の菌床から始め、徐々に量を増やしていますが、シイタケには発生の波があるため想定よりも収穫量が多い日があります。

安定した販路が無いと生産の拡大は難しいと思い、金融機関が紹介してくれた地元の青果市場に相談してみたところ高評価をいただき、「地場産品は積極的に扱いたいので、少ない数からでも良い」と150g×20袋=1箱として扱っていただけることになりました。 9月下旬から『ぶあついしいたけ』の名前でブランド化を進めていきます。これまでに当社のシイタケを召し上がっていただいた方からは、「肉厚!」と驚かれます。「ぶあついしいたけ」が熊谷の新たな特産品になったらうれしいですね。

今後の展望は「しいたけ栽培×福祉」


実はきのこのハウス栽培を始めるにあたり、大きな構想がありました。
障碍を持っている方を雇用したいと考えている企業に栽培ハウスを丸ごと貸し出し、そこで働く障碍者を紹介する“シイタケ生産サポート事業”を展開することです。

そのために障碍を持っている方がシイタケづくりを学べる「就労移行支援施設 グリーンジョブくまがや」を作りました(2024年7月オープン)。シイタケの栽培方法だけではなく、パソコンの基本操作やハウスクリーニングなどのスキルを学ぶことができます。作業がルーティン化でき、通年栽培可能なシイタケは、福祉との相性が良い作物です。

栽培したシイタケは国分グリーンファームでも買い取りできるように販路を整えています。もちろん企業が自社ブランドとして売り出すこともできます。

来年の春にはグリーンジョブくまがやから就労可能な方が誕生する予定です。企業と障碍を持っている方を繋げながら、地域の農業を活性化することを目指し、事業を展開していきます。



●取材協力

株式会社国分グリーンファーム
代表取締役 土屋 耕亮 様、施設設備担当 上林 信哉 様、栽培・販売担当 鈴木 雄 様





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