商品誕生の秘話2

2021/03/15

きのこ栽培システム

超音波加湿器ができるまで20年。苦労を重ねた開発秘話

Q.機器開発において、苦労したことや開発秘話はありますか?

<田部>:
今では定番商品となった超音波加湿器は、改良に改良を重ね、今の形になるまで20年もかかりました。
一番苦労したのは、「超音波式はすぐに壊れる」というイメージを覆すことでした。栽培室のような高湿度の環境で使っていると、通常1年ほどで壊れてしまいます。
加湿器の中の振動子という部品は1年(約1万時間)ほどの寿命があります。しかし、一緒についている基板が高湿度の環境に耐えられないのです。
そこで、基板の寿命を延ばすために電子機器メーカーならではの工夫や改良を重ね、約2~3年の耐久性を持たせることに成功しました。
完成したときはうれしかったですね~。売れ始めたきっかけは、きのこの一大産地・長野県で影響力のある生産者Aさんを説得して、試しに使っていただい事でした。

その方も「超音波式はすぐに壊れる」というイメージをお持ちだったので、あまり気が進まない様子でした。
しかし、2年ほど経った頃。本当に壊れないことに驚いたAさんが「これは良い加湿器だ!」と喜んでくださったのです。すると、「ニッポーの超音波加湿器は壊れない」との評判が口コミで広がり、人気商品となりました。おそらく、今きのこ業界で超音波加湿器のシェアはニッポーが一番だと思います!

<若槻>:
懐かしいですね!そうそう、さらに超音波加湿器の実力を上げていただいたともいえるエピソードがあります。
当時、6型の超音波加湿器の霧化量は理論上の3.6Lを謳っていました。しかし、霧が出てくるときに水滴戻るロスがあるため吐出量は3.6Lありませんでした。
この事を知った取引先の部長さんから「これでは案件の稟議書が通らない!」とお叱りを受けてしまい、何としても急ぎ改良する必要がありました。

そして、当時の開発担当者がノズルの形状を工夫したり、ノズルの長さを変えてみたり、試行錯誤した結果3.4Lまで上がったのです。
取引先からは「改良されても3.0Lまでだろうと思っていたから驚いた!よくやってくれた!」とお褒めの言葉をいただきました。
これにはみんなガッツポーズで(笑)喜びましたね~。あの超音波加湿器のとっくりの様な独特な形をした吹き出し口はこの時に誕生したのです。


<田部>:
ニッポーは諦めなかった。その姿勢が評価されて、その後も取引先から多くの注文をいただくことができました。

<若槻>:
他にも、栽培室で加湿器を使うと、水槽内にきのこの胞子や汚れが溜まってフロートが動かなくなり、霧化できなくなります。
そこで、簡単に水槽内の汚れを排出する機能を開発しました。また、営業が加湿器の修理に行ったとき、ネジの取り外しに相当苦労していて…。
これでは生産者も使いにくいだろうと、現在の蝶ネジのタイプに変えました。“工具が不要でメンテナンスが簡単”な加湿器に生まれ変わりました。
ニッポーの商品開発は今も昔も「現場での使いやすさ」を第一に考えています。

<田部>:
ニッポーの加湿器は本当に壊れにくくて、修理業者から冗談で
「これじゃ商売にならないから、何年かたったら壊れるようにできないか」と相談されたこともありましたよ(笑)
今も昔も、モノづくりの原点は、生産者の声を聞くことです。

<若槻>:
きのこ栽培で収穫後の菌床は“産廃”になります。「廃床(いらなくなった菌床)を自分の土地に置いておくことも不法投棄になる」と、地元の警察に注意されたことがありました。そんな事もあって、ニッポーで廃床処理機を作りました。
おがくずとビニール袋を自動で仕分けしてくれるので、簡単に廃床処理ができます。


<藤原>:
そういえば、廃床処理して作ったおがくずの中でカブトムシの幼虫育てて販売しましたね!

<若槻>:
カブトムシの幼虫は思いのほか売れちゃって(笑)。
これからきのこ栽培を始める方は、何らかの形で廃床処理をしなければならないという事も忘れてはいけませんね。

きのこは生き物!生産者に寄り添った「現場で使いやすい製品作り」

対談画像

<藤原>:
生ものを売るのはとても大変なことです。
ある日突然(マイタケが)大量に出来てしまって安売りする事になったり、相場が良い時に限って全然出来なかったり。
きのこは生き物なのでこちらの都合には合わせてくれません。お客さんとの約束したときにマイタケが生えて来なかったときには頭を抱えました。

順調な生産があってこそお客さんと契約ができますから、その点とても苦労しましたね。 突然大量に出来てしまったマイタケは乾燥させて「乾燥マイタケを作ろう!」と思い付いたものの、乾燥機を購入する費用までは捻出できませんでした。
そんな時に、町の方が乾燥機を持っていて、無料で貸してもらうこともありました。
出雲横田きのこ園が最終的に奥出雲の町役場に引き継がれるまで約18年。これほど長く続けることが出来たのは、色々な人たちとのつながりがあってこそだと、人との縁をひしひしと感じます。
いいものを作るために、みんなで助け合って苦労を乗り越えてきました。
いま、「奥出雲まいたけ」は町の宣伝にもなっていて、奥出雲まいたけを目当てに遊びに来てくれるお客さんも増えました。そういった功績につなげることができたのは、たいへん誇らしいです!

<若槻>:
これらの経験を通し、通年出荷に応えるためには“きのこを安定した環境で作ることが大切”なのだとよく分かった反面、それだけではない事もわかりました。
きのこは生き物だから、マニュアルに通りやっても、必ず生えてくるとは限らない。環境を整備するだけではなく、「生き物を扱っているという心構え」が大切なのです。


対談画像 

<田部>:
当時、出雲横田きのこ園で働いていた方に聞いたけど、日曜日にも必ず見に行っていたそうですよ。生き物だから放っておけないって。

<藤原>:
もっと美味しくなるかもしれない!ってクラシックを聞かせたこともありましたね(笑)


<若槻>:
ニッポーは機器の開発だけではなく、きのこの栽培から販売、販路探しまで色々な経験をしました。

だからこそ、私たちは生産者の気持ちがよく分かります。最近では自社商品、農業用の制御機器の開発にも力を入れています。
しかし、コンセプトは今も昔も変わらず、「現場での使いやすさにこだわった製品作り」です。生産者と同じ目線に立ち、現場の声に耳を傾けながら開発しています。
きのこ栽培の事で何かお困りの方、事業拡大を考えている方、これからきのこ栽培を始めようと思っている方はぜひニッポーまでご相談ください。

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